梅雨入り前ののランチ

 梅雨入り前のはっきりしない気分の日曜。空は晴れているのに雲の行方が気になる。窓を開けて家の中に風を通しましょう。大雨に洗われた緑がまぶしい。

ピクニック気分で、お昼はサンドイッチ。小鳥の声に誘われて、心も空へ飛んでいきます。人には耳翼という翼があるんです。

さて、手前の大皿に特に珍しくもないサンドイッチ。この時節の、さまざまな花の中で特権的なあでやかさに咲く薔薇は、描いても描いても描き切れない花の一つです。青いバラは、憧れますが、園芸素人なので、せめて描いて満足したいと思ったのですけれど、結局、満足できないのよね。

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 大皿の向う、蔓薔薇の四方皿に、ホタテ貝と茸のバジルソース炒め。庭にバラも少しありますが、世話する時間がないので、庚申薔薇、モッコウバラなど、昔ながらの強い品種ばかりです。野ばらも香りが好き。

  愁ひつつ岡に登れば花茨  蕪村

いかにも青春の愁いって感じですね。

  花茨故郷の道に似たるかな  蕪村

蕪村にとって、野茨はは懐かしい花だったのでしょうね。棘は痛いけど。

赤道以南に野ばら(野生の薔薇)は嘗てなかったというのは本当でしょうか。とまれ、今は、世界中に愛好家がいて、次々と新しい品種が作り出されています。これほど人に愛されている花はないかもしれません。古代ギリシアの時代から、詩に詠われ、描かれ、紋章にされてきた薔薇薔薇。万葉集には「いまら」(→いばら?)の一首がありますが、何となくピンときません。古今集には薔薇【ソウビ】が出てきます。かさねの色目にも「薔薇・さうび」があります。表が紅で裏が紫。濃艶ですね。

左側蓮華形の向付にグリーンサラダ。ティーカップも蔓薔薇。

  定住の家を持たねば朝に夜にシシリイの薔薇やマジョルカの花  斎藤史

美しいからと、異国の地の花屋に売られるシシリイの薔薇やマジョルカの花。華やかな哀しみが、まさに薔薇そのもの。

斎藤史は長く信州に住み続けたけれど流離の思いがあったのでしょう。その昔「「女は三界に家無し」などといわれていました。 しかし女性だけではなく、人はだれしもこの世にほんのひととき滞在して旅立つ客のようなもの。 せめてそのつかの間、身近に花を飾っていたいものです。

夏薔薇の棘うっとりと刺しけるよ  おるか

「            2023年6月

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