五月は蚕豆の季節。売り場に若緑の鞘が並んでいると、つい手が伸びる。鞘をパカッと割ると、そこには純白で、しっとりふわふわのベッドがしつらえてある。三つ四つ並んで眠る蚕豆の子供たちは，丸まって夢を見ているようだ。枕のデザインを考えるとしたら、蚕豆の形がいいと、いつも思う。仄かな窪みにやさしい夢が溜まっていそうだ。
そんな蚕豆のお母さんが大切に寝かしつけた子供たちの眠りをさまして、あまつさえ熱湯に投じてしまうのだから、われながらひどく残酷なことをしていると思う。すまないと思うけれど、おいしいんですよね、蚕豆。
さて、写真手前の薔薇模様のさらには山菜スパゲッティ．山菜のほろ苦さが気に入っています。今年は蕨が早くから採れました。
右側の蔓薔薇ひし形（せいかくには平行四辺形））皿には塩ゆで蚕豆。真ん中の牡丹模様の皿に、牡丹の花弁のような鯛のお刺身。 そして、左側の色絵唐草のカフェ・オ・レ・ボウルには、蚕豆スープです。普通のポタージュスープに、蚕豆をつぶして混ぜるだけ。とっても簡単です。蚕豆は軟らかいので漉すまでもありません。同様にすりつぶして、マヨネーズやソースに混ぜても色がきれいで素敵に見えます。
そして五月、蚕豆、とくればペコリーノチーズと赤ワインです。黒部のリコッタチーズもちょうど出会えました。こちらはヤギのチーズ。此処のリコッタチーズはすぐ売れてしまうのでなかなかお目にかかれない逸品なんです。
ワインはシチリアのフラッパートです、海に近い土地で海鮮にも会うと進めてもらいました。
その向こうの赤絵金彩大湯飲み、銘は「廃園の薔薇」です。クリムトのアトリエの庭の末枯れた薔薇が忘れられなくて。
麗しの五月、樹上に朴の花、地上には星の欠片のような稚児百合など白い花々。そして卓上にソラマメ。なんて美しい季節でしょう。
雨ゆるむまま蚕豆のねむるまま おるか
２０２３０５０１
