薄紅葉

秋めいてまいりました。

朝には、木々の葉に露の球が、宮沢賢治の「十力の金剛石」の宝石の雨のようにきらめいて、それは、きれいです。

気がつくとそれぞれの葉が少し色づいて来ています。燃えるような錦秋も、もちろん美しいけれど、淡い気配も、また別の風情があります。

 手につつむ頬山々の薄紅葉   おるか

 この季節の山道の散歩の楽しみの一つは、キノコの発見です。菌類って面白いですね。妖精のダンスの跡だという菌輪を発見したりすると嬉しくなります。

目に楽しく、そして味も良い。茸は私の大事な蛋白源です。

 手前の呉須赤絵手菓子鉢に茸蕎麦。暖かいお蕎麦の恋しい時節になりました。菓子鉢でうどんやラーメン食べるのは、なんとなく贅沢気分で、好きなんです。

 右側の枯葉豆皿に薬味、五彩麦わら猪口には、蕎麦湯がほんの一口。その上の角皿には揚げ出し豆腐きのこ餡掛け。

紅葉模様の手付き鉢に、エリンギのバターソテー。酢橘をしぼるとまた美味しい。

染付小茄子向付けに,きくらげと牛蒡のマヨネーズ和え。

 お蕎麦にはちょっとお酒が欲しくなりますね。 この徳利さえあれば、それだけで

林間に酒を温め紅葉を焚く 白楽天

の詩の風流をわがものにできます。フフ。

 徳利の形を砧形とよんでいます。これまた秋らしいでしょ?とはいっても砧打つ音なんて聞いたことないですけど。漢詩によく歌われていますね。李白の詩にもあります

長安一片の月

万戸衣を打つの声

秋風吹きて尽きず

すべてこれ玉関の情

いずれの日にか胡虜を平らげて

良人遠征をやめん        李白(子夜呉歌))

この時代にも戦争があって、哀しみながら仕事する女性たちがいたんですね。

  朴落ち葉己の影に落ちにけり  おるか

                                                                      2022 10月 3日

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