
そろそろ重陽,九という陽の数字が重なるその日は菊の節句ともいわれていますので、、 菊花の文様の器を並べてみました。
[ 礼記] に「秋の季節は黄色の菊の花がある」、と書かれています。。紀元前から中国では菊が愛されていたらしい。古代には植物は、薬効とか有用性が記されることが多いので、花の美をめでるのはもっと後のことかもしれません。 菊が日本に渡来したのは奈良時代と言われています。奈良の古寺の丸瓦の 中央の丸から放射状に花弁が出ている模様を、てっきり菊の花だと思っていたら、蓮を真上から見たところなんですってね。
蓮と菊の文様の紛らわしさについて、若桑みどり氏がとても興味深い考察をしています。 それによると、古代ギリシャ・ローマ、の調和的宇宙のシンボルである八つの放射状を持つ円環を始め、十六世紀の錬金術の宇宙図などに見られる丸い中心から放射状に広がる文様まで、それぞれの文化の持つ宇宙観と照応することが、円花文様の普遍的な伝搬力の真因ではないか。とかいています。まとめてしまうとやたら理屈っぽく感じられるかもしれませんが、 文化人類学の創始者レヴィ・ストロースが。ある南米原住民の複雑な全身タトゥーの文様が、交叉従妹婚によってくみ上げられた彼らの世界観に照応することに気づいたその時から、文様は、思考に適することが、わかったのでした。
さて、写真手前のキノコと牛蒡御飯の飯碗は、内側に菊、外側は菊唐草に唐子。唐子は瓢箪をもっています。つまり菊慈童です。 御能にもあるように、その昔中国の周の穆王に使えた美少年が罪を得て流された山奥の、、菊の露を飲んで不老不死になったという物語。御飯もおいしく見えるのでは?
その向こう。菊の葉型の向う付けにばい貝の御作り、呉須赤絵風の片口は湯葉としめじの炊き合わせ左の色絵色紙模様の中皿の淡い色合いの菊の花模様も食材の色を引き立てるような気がします。
中央の色絵のそば猪口に吸物を入れるつもりが忘れました。今回は紅葉を見せていますが裏側には桜が描いてある万花千葉文様です。 朴の枯葉の上にに胡麻団子。染付染付大皿は、秋の七草文様です。 果物、加賀梨と加賀キウイの山盛りに入っているのは呉須赤絵手大鉢。 秋の日の静かなランチ。何気ない日常のありがたさが身に染む昨今です。
木漏れ日の床に音なき菊日和 おるか台風の前の秋の日の静けさ。
2022年 9月5日
